ChatGPTが“嘘つき”から“信頼できる秘書”に変わる技術RAGとは?仕組みと活用例を徹底解説!

著者:GOZEN AI Lab管理人
生成AIエンジニア(オープンバッジ取得)生活や業務に潜む「面倒くさい」を手放すため、生成AIを活用した業務効率化施策、自動化ワークフローの構築・運用などを手がけ、実践と継続的な改善を通じて仕組みづくりを推進している。


結論:AIは“知らないこと”に自信満々で答えてくる。

使っている人なら、一度は感じたことがある“モヤモヤ”。
便利なはずの生成AIが、なぜか平気で間違えたり、最新情報をスルーしてくる理由——それは、「調べる力」がなかったからです。

そんな生成AIの「知らない」や「間違える」という弱点を克服し、もっと賢く、もっと頼りになる存在に変えてくれる技術がRAG(リトリーバル・オーグメンテッド・ジェネレーション)という技術です。

この記事では、RAGが一体どんな技術なのか、なぜ今必要なのか、そして私たちの生活や仕事にどんな変化をもたらすのかを、専門知識がない方にも分かりやすく解説します。

目次

従来の生成AIの「困った」を解決!なぜRAGが必要なのか?

従来の生成AI、特に大規模言語モデル(LLM)と呼ばれるAIは、インターネット上の膨大なテキストデータを学習することで、文章を作ったり、質問に答えたりできるようになりました。例えるなら、ものすごくたくさんの本を読んだ博識な人のようなイメージです。

しかし、この「博識な人」にはいくつかの弱点がありました。

  1. 学習データ以前の情報しか知らない: 読んでいない最新の本(=学習データにない新しい情報)については、当然ながら答えられません。
  2. 読んだ本の内容をうろ覚えだったり、ごちゃ混ぜにしてしまうことがある: これが「ハルシネーション」と呼ばれる、事実に基づかない情報を作り出す現象の原因の一つです。自信満々にデタラメを言うので、信じてしまうと困ります。
  3. 自分の「知識の源」を教えてくれない: なぜそう答えたのか、根拠となる情報元を示してくれないため、その回答が正しいのか検証しにくいです。

これらの弱点があると、特に正確性や最新性が求められる場面(例えば、会社のルールについて聞く、最新の研究結果について質問する、法律の改正点を知りたいなど)で、生成AIをそのまま使うのは難しかったのです。

そこで登場するのが、RAGです。

RAGの仕組み:AIが「自分で調べてから」答える

RAGは、従来の生成AIが持っていた「知らない」「間違える」という弱点を克服するために考え出された技術です。その名前、Retrieval-Augmented Generationは直訳すると「検索(Retrieval)で拡張された(Augmented)生成(Generation)」となります。

つまり、情報を「生成」する前に、必要な情報を「検索」して取り出す(Retrieval)プロセスを付け加える(Augmented)技術なのです。

例えるなら、何か質問されたときに、自分の記憶(学習データ)だけで答えるのではなく、一旦、信頼できる図書館に行って関連する本を探し(検索)、その本の内容を読んで理解してから(取り出し)、自分の言葉で分かりやすく説明してくれる(生成)ようなイメージです。

もう少し詳しく仕組みを見てみましょう。RAGは、主に以下の2つのステップで動きます。

  1. Retrieval(検索・情報収集):
    • ユーザーから質問を受け取ります。
    • その質問に関係する情報を、事前に用意された「外部の知識源」の中から探し出します。この知識源は、インターネット上の最新ニュース、企業の社内マニュアル、個人のドキュメント、特定のデータベースなど、AIが学習データとしては知らないけれど、あなたが必要とする正確な情報が含まれている場所です。
    • 質問内容と最も関連性の高い情報をいくつか選び出します。
  2. Augmented Generation(拡張された生成):
    • 選び出された「関連性の高い情報」と、ユーザーの質問を一緒に生成AI(LLM)に渡します。
    • 生成AIは、自分の持っている知識に加えて、渡された正確な情報を参考にしながら回答を生成します。

この仕組みにより、生成AIは自分の内部知識だけでなく、外部から得た最新かつ正確な情報に基づいて回答できるようになります

RAGの「ここがすごい!」:メリット

RAGの導入によって、生成AIの能力は飛躍的に向上します。主なメリットは以下の通りです。

  • 情報の正確性が格段に向上: 事実に基づかない「ハルシネーション」を減らし、より信頼できる回答を得られます。特定の専門分野や社内情報に関する質問にも、正確に答えられるようになります。
  • 最新の情報に対応できる: 学習データにない、RAGで参照できる最新の外部知識を使って回答するため、常に新しい情報に基づいた応答が可能です。
  • 回答の根拠を示せる: 参照した外部の情報源(例えば、PDFドキュメントの該当箇所やWebページのURLなど)を示すことができるため、回答の信頼性を自分で確認できます。これは、AIが「なぜそう答えたのか」が分かりやすくなるという点で、非常に重要です。
  • 特定の分野に特化したAIを構築しやすい: 汎用的な学習データに加え、特定の専門知識(医療、法律、特定の企業の製品情報など)を含む外部知識源を連携させることで、その分野に特化した高性能なAIを比較的容易に構築できます。
  • 学習データの再学習が不要: 新しい情報が出た場合、AIモデルそのものを再学習させる必要がなく、外部の知識源を更新するだけで対応できます。これは運用コストや手間を大幅に削減できます。

これらのメリットは、まさに私たちが生成AIを使う上で感じていた「モヤモヤ」を解消してくれるものです。特にビジネスの現場では、情報の正確性や最新性が必須となるため、RAGは非常に重要な技術として注目されています。

RAGを使う上での注意点

RAGは非常に有望な技術ですが、いくつか注意点もあります。

参照する知識源の質が重要: RAGは外部の情報を参照して回答を生成するため、参照する情報源が古かったり、間違っていたりすると、生成される回答も不正確になります。「質の高い情報源をいかに用意するか」がRAG活用の鍵となります。

検索の精度が生成に影響: ユーザーの質問に対して、適切な情報源から関連性の高い情報を正確に検索できるかどうかが、最終的な回答の質を左右します。検索技術の最適化も重要です。

完全にハルシネーションを防げるわけではない: RAGによってハルシネーションは大幅に削減されますが、完全にゼロにすることは難しい場合があります。最終的な情報を鵜呑みにせず、根拠を確認する姿勢は引き続き重要です。

RAGはこんなところで活躍!具体的な活用例

RAGは、すでに様々な分野で活用され始めています。

  • 社内FAQや情報検索システム:
    • 社員からの「この規程はどうなっていましたか?」「この製品の使い方を教えてください」といった質問に対し、社内マニュアルやドキュメントをRAGが検索し、正確な情報を元に分かりやすく回答してくれます。担当部署への問い合わせの手間が省け、業務効率が向上します。
  • カスタマーサポート:
    • 顧客からの問い合わせに対し、製品マニュアルやよくある質問集(FAQ)データベースを参照して、正確かつ迅速な応答が可能です。オペレーターの負担軽減や、顧客満足度向上に繋がります。
  • 専門文書の要約や質問応答:
    • 法律文書、研究論文、技術資料など、特定の専門分野の大量のドキュメントをRAGが参照し、内容の要約や特定の情報に関する質問への回答を生成します。専門家が情報を探す手間を減らし、業務を効率化できます。
  • 最新ニュースや市場動向の分析:
    • 常に更新されるWeb上のニュースや市場データとRAGを連携させることで、最新情報に基づいたレポート作成や質問応答が可能になります。
  • 教育分野:
    • 特定の教科書や参考書の内容を参照し、生徒からの質問に分かりやすく回答したり、関連情報を提示したりすることで、個別学習のサポートに役立てられます。

これらの例からも分かるように、RAGは「特定の情報に基づいた、信頼できる回答を得たい」というニーズがあるあらゆる場面で非常に強力なツールとなります

RAGとディープラーニングの違いとは?

簡単にいうとRAGは“仕組み・手法”であり、Deep Learningは“学習の土台”です。この2つはよく混同されがちですが、そもそも役割も階層も異なります。

Deep Learningは、AIが大量のデータからパターンや特徴を自動で学習するための技術す。
ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)も、このディープラーニングによって作られています。

  • 人間の脳の神経回路をまねた「ニューラルネットワーク」を使って学習
  • 入力(文章・画像など)から出力(予測・分類・生成)を導き出す
  • 過去のデータから学習して「知識」を持つAIを作るための基盤技術

つまりDeep Learningは、AIの“脳そのもの”を育てる技術です
たくさんのデータを読み込み、そこに潜むパターンやルールを自動で見つけ出すことで、AIは「これはこういうものだ」と理解する力を身につけていきます。
言い換えれば、人間が一つひとつルールを教えなくても、自分で学習して賢くなっていく技術です。

たとえば、猫の写真を何千枚と見せれば、特徴(耳の形や毛のパターンなど)を自動で学び、次に見た写真が猫かどうかを判断できるようになります。
これはまさに、子どもがたくさんの経験を通して「これは犬」「これは車」と覚えていくようなものです。

そうして育てられたAI(特にLLM)に「外部の知識を参照する力」を与える仕組み、それがRAGなのです。

まとめ

RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、外部の信頼できる情報を「検索」してから回答を「生成」するという賢い仕組みによって、これらの課題を克服し、生成AIをより実用的で信頼できるツールへと進化させています。

RAGの登場により、私たちはAIを単なる「文章生成ツール」としてだけでなく、「常に最新かつ正確な情報に基づいて、私たちの疑問に答えてくれる賢いパートナー」として活用できるようになります。
ぜひ、皆さんもRAGに注目してみてください。

よくある質問:FAQ

Q1. RAGを使うと、AIはもう絶対に間違えなくなるの?
A1. RAGによって情報の正確性は大幅に向上しますが、完全に間違いがゼロになるわけではありません。参照する情報の質や、情報を組み合わせて回答を生成する過程で意図しない誤りが生じる可能性はゼロではありません。重要な情報については、表示された根拠(情報源)を確認することをおすすめします。

Q2. RAGを使うには、何か特別なシステムが必要?
A2. RAGの仕組みを構築するには、大規模言語モデル(LLM)に加えて、外部知識を格納・検索するためのデータベース(特にベクトルデータベースと呼ばれるものが多いです)や、検索と生成を連携させる仕組みが必要です。最近では、これらのRAGシステムを簡単に構築できるツールやサービスも増えてきています。

Q3. 会社の情報など、外部に出したくない情報もRAGで利用できる?
A3. はい、可能です。インターネット上の情報だけでなく、企業のイントラネット内にあるドキュメントやデータベースなど、特定のアクセス権限が必要な情報源をRAGの検索対象とすることができます。これにより、社内情報に基づいた安全なAI活用が可能になります。ただし、情報漏洩がないよう、セキュリティ対策がしっかりしているシステムを選ぶことが重要です。

Q4. RAGと「ファインチューニング」は何が違うの?
A4. ファインチューニングは、既存のAIモデルに特定のデータを与えて追加学習させ、そのモデル自体の能力や応答スタイルを調整する手法です。一方RAGは、AIモデルはそのままで、外部の知識を参照する仕組みを追加することで、特定の情報に基づいた応答を可能にします。ファインチューニングはモデルの「脳」を直接訓練するイメージ、RAGは「外部の資料を見ながら答える能力」を与えるイメージです。両者は組み合わせて使われることもあります。

専門用語解説

  • 生成AI (Generative AI): テキスト、画像、音楽、コードなど、新しいコンテンツを作り出すことができる人工知能のこと。学習したデータに基づいて、まだ存在しないオリジナルのものを生成します。
  • 大規模言語モデル (LLM: Large Language Model): 生成AIの中でも特に、人間が使う自然な言葉(テキスト)を理解し、新しいテキストを生成することに特化した巨大なモデルのこと。インターネット上の大量の文章を学習しています。ChatGPTなどがこれにあたります。
  • ベクトルデータベース (Vector Database): テキストや画像などのデータを「ベクトル」と呼ばれる数値の並びに変換して格納し、ベクトル間の類似度に基づいて高速に検索できることに特化したデータベースです。RAGにおいて、外部知識を効率的に検索するために重要な役割を果たします。
  • 埋め込み (Embedding): テキストや画像といった様々な種類のデータを、コンピューターが扱いやすい数値の並び(ベクトル)に変換する技術のこと。意味的に似ているデータは、変換後のベクトルも近くなるように設計されます。RAGでは、ユーザーの質問と外部知識を同じ形式のベクトルに変換し、類似度を計算することで関連性の高い情報を探し出します。

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著者

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GOZEN AI Lab管理人、生成AIエンジニア(オープンバッジ取得)。生活や業務に潜む「面倒くさい」を手放す自動化システムの開発・検証・最適化に注力。これまでに、生成AIを活用した業務効率化施策や、n8n・Difyを用いた自動化ワークフローの構築・運用を手がけ、実践を通じて継続的な改善と最適化に取り組んでいる。

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