著者:GOZEN AI Lab管理人
生成AIエンジニア(オープンバッジ取得)生活や業務に潜む「面倒くさい」を手放すため、生成AIを活用した業務効率化施策、自動化ワークフローの構築・運用などを手がけ、実践と継続的な改善を通じて仕組みづくりを推進している。
結論:既にあなたのAIは、見て、聞いて、考えて、仕事しています。
画像認識や音声アシスタントなど、それぞれの分野で優れた能力を発揮するAIはすでに私たちの生活に浸透しています。しかし、もしAIが、私たち人間のように「見て」「聞いて」「話して」「触れて(データとして)」、それらすべてを統合して理解できるとしたらどうでしょう?
それが、まさに今回ご紹介するマルチモーダルAIの概念です。
マルチモーダルAIとは、簡単に言えば、画像、音声、テキスト、数値データなど、複数の異なる種類の情報を同時に処理し、統合的に理解・判断・生成できる人工知能のことです。まるで人間が目や耳、言葉、そして五感を駆使して世界を認識し、物事を判断するように、AIも複数の情報源を組み合わせることで、より深く、より正確に現実世界を理解できるようになるのです。
これまでのAIは、例えば画像認識AIであれば画像データのみ、音声認識AIであれば音声データのみ、といった具合に、特定の情報(モダリティ)に特化していました。しかし、マルチモーダルAIは、これらの専門家たちが連携して一つの課題に取り組むようなイメージです。
例えば、あなたが友人と「この写真の赤いバッグについて教えてほしい」と話しかけたとします。人間であれば、写真(視覚情報)とあなたの声(聴覚情報)、そして言葉(言語情報)を同時に処理し、「この写真に写っているのは赤いバッグで、これこれこういう特徴がありますよ」とスムーズに答えることができますよね。マルチモーダルAIは、まさにそのような総合的な理解力をAIに持たせることを目指しています。
この記事では、具体的な業務フローに沿って、マルチモーダルAIの活用方法を詳しく解説していきます。
顧客対応業務フロー:お客様の「困った」を素早く解決するAIの力
お客様からの問い合わせ対応は、企業の顔となる重要な業務です。マルチモーダルAIを導入することで、対応の迅速化と品質の均一化が図れます。
Before → After
従来の流れ | AI導入後の流れ |
---|---|
お客様からの問い合わせ | お客様からの問い合わせ |
内容確認 | AI自動分析(画像・音声・テキスト) |
調査・検索 | AI候補回答生成(過去事例とマッチング) |
回答作成 | 担当者確認・調整 |
返信 | 自動返信 or 担当者送信 |
具体的な活用例ケース:商品に関する問い合わせの例
お客様が「この商品の使い方を教えてください」と、商品写真と共に音声メッセージを送ってきたとしましょう。AIは、お客様の言葉だけでなく、送られた写真も瞬時に分析します。

商品写真 + 「この商品の使い方を教えて」(音声メッセージ)
AI処理
- 画像認識で商品を特定(写真から商品の型番や種類を識別)
- 音声認識でお客様の音声をテキスト化(「使い方を教えて」という意図を理解)
- データベース検索で商品データベースから使用方法を検索
- 類似質問の過去回答を参照し、最適な回答候補を生成



○○という商品ですね。こちらがご利用方法の動画と、よくあるご質問のページです。ご不明点があれば、お気軽にお尋ねください。



AIが生成した回答内容を確認し、必要に応じて補足情報を追加して送信。
このように、AIが複数の情報を同時に処理することで、顧客対応の効率が飛躍的に向上します。
効果
- 対応時間:平均15分 → 3分(80%削減)。お客様を待たせる時間が大幅に短縮されます。
- 回答精度:担当者の知識に依存 → 過去全事例活用で安定。誰が対応しても質の高い回答が可能になります。
- 24時間対応:可能(緊急時は担当者にエスカレーション)。お客様は好きな時に問い合わせができ、企業は対応負荷を軽減できます。
営業業務フロー:AIがあなたの「デキる相棒」になる!


営業活動は、顧客との関係構築と提案の質が成約率を大きく左右します。マルチモーダルAIは、営業準備から商談、フォローアップまで一貫して支援し、営業担当者の強力な「デキる相棒」となり、成約率向上に貢献します。
Before → After
従来の営業フロー | マルチモーダルAI導入後の改善フロー |
---|---|
見込み客情報収集 | AI顧客分析(WEB・SNS・公開情報を自動収集・分析) |
アポ取得 | (※AI分析結果を元に優先順位付けしアプローチ自動化も可能) |
商談準備 | AI提案資料自動生成(顧客特性に合わせたカスタマイズ) |
提案資料作成 | (↑手動作成から自動生成に置き換わり) |
商談実施 | 商談シミュレーション + リアルタイム助言(AIが音声解析しサポート) |
フォローアップ | 自動議事録作成 → 次回提案生成(商談内容を分析して次の戦略を提案) |
具体的な活用ケース:営業準備フェーズの例
「新しい見込み客のA社に最高の提案をしたいけど、情報収集と資料作成に時間がかかる…」こんな時こそAIの出番です。



「A社の情報を調べて提案資料を作って」とAIに指示。
AI処理
- A社のWEBサイト、プレスリリース、業界ニュースを自動収集(テキスト情報)
- A社が公開している企業紹介動画や製品デモンストレーション動画があれば、その内容を解析し、企業の強みや課題、ニーズを深く掘り下げて理解(動画情報)
- 同業他社の成功事例を検索し、A社に適用できそうなポイントを抽出
- A社の課題と解決策をマッチングさせ、最適なソリューションを特定
- A社向けにカスタマイズされた提案書を生成
- 想定される質問とその回答集を生成
- 競合との比較表を生成
具体的な活用ケース:商談中フェーズの例
商談中でも、AIがリアルタイムで状況を分析し、最適な助言をしてくれます。



他社さんと比べて、どのあたりが優れているのかをもう少し具体的に聞きたいです。
AI(音声認識)
- 顧客の音声トーンを分析し、関心度や納得度を測定
- 顧客の発言から、次に話すべき話題の転換タイミングを提案
- 顧客の表情変化(画像認識)やキーワードから、追加で説明すべきポイントをリアルタイム表示



お客様の声のトーンが下がり、判断に迷っている様子です。
比較資料を提示し、価格・性能・サポート体制など3軸で明確に差別化を説明してください。その際、お客様の関心ポイント(例:導入後のフォロー)に焦点を当てると効果的です。
このような具体的なアドバイスを受けられます。
効果
- 準備時間:平均4時間 → 1時間(75%削減)。煩雑な準備作業から解放され、顧客との対話に集中できます。
- 提案精度:経験に依存 → データドリブンで向上。AIが収集・分析した客観的なデータに基づいて、より質の高い提案が可能になります。
- 成約率:過去実績から20-30%向上。質の高い準備と商談中の最適な支援により、成約につながる確率が高まります。
製造・品質管理業務フロー:匠の技をAIが引き継ぎ、進化させる
製造業において、品質管理と生産効率の向上は常に重要な課題です。マルチモーダルAIは、目視検査の自動化、異常検知、予知保全といった分野で大きな力を発揮し、熟練の「匠の技」をAIが引き継ぎ、さらに進化させます。
Before → After
従来の流れ | マルチモーダルAI導入後の流れ |
---|---|
原材料入荷 | 原材料入荷 |
目視検査 | AI検査(画像・重量・音響データで自動判定) |
製造工程 | 製造工程(AI監視による異常早期発見) |
中間検査 | リアルタイム品質モニタリング・カメラ:外観チェック・マイク:異音検知・センサー:温度・振動監視 |
最終検査 | 予測保全(機械状態をAIで分析) |
出荷判定 | 総合品質判定(すべてのデータを統合してAIが最終判定) |
具体的な活用ケース:品質検査工程の例
製造ラインを流れる製品の品質検査は、これまで人間の目や勘に頼る部分が多く、見落としや検査員の疲労による品質のばらつきが課題でした。
製品がライン上を流れる(AI同時処理)
- カメラ1:製品表面の傷や汚れを画像認識で検出
- カメラ2:製品の寸法や形状を画像認識でチェック
- マイク:製品から発生する音(異音など)で内部欠陥を音響分析で判定
- 重量センサー:規定値との差異を測定(数値データ)
AI判定
- 良品/不良品の自動分類
- 不良原因の特定(傷の位置、種類など)
- 必要に応じて、改善提案の自動生成



AIの判定結果を人が最終確認。
必要に応じて手動で最終チェックを行うことで、AIの精度をさらに高めるための学習データにもなります。
具体的な活用ケース:予知保全の例
「機械が故障する前に、事前にメンテナンスできたら…」そんな願いをAIが叶えます。
製造設備のAI継続監視
- 振動パターンの変化を検知
- 稼働音の異常検知(異音の発生など)
- 温度上昇トレンドの分析(センサーデータ)
- 設備写真による外観変化の検出(AIが腐食や摩耗の兆候を画像で捉える)



AI予測
「3日後にベアリング交換が必要な可能性が高い」
「来週、モーター不調の可能性80%」



AIの予測に基づく計画的なメンテナンスを実施。
これにより、突発的なライン停止を防ぎ、生産計画の遅延リスクを最小限に抑えられます。
効果
- 検査精度:92% → 99.5%以上。人間の目では見逃しがちな微細な欠陥も正確に検出します。
- 検査時間:50%短縮。高速かつ正確な検査が可能になります。
- 設備稼働率:計画外停止80%削減。予知保全により、突発的な故障による生産停止を大幅に減らせます。
在庫・発注管理業務フロー:適正在庫をAIが教えてくれる!
在庫管理は、企業の利益に直結する重要な業務です。過剰在庫はコストを圧迫し、品切れは販売機会の損失につながります。マルチモーダルAIは、複数の情報を統合して需要を予測し、適正在庫の維持を強力にサポートします。
Before → After
従来の流れ | マルチモーダルAI導入後の流れ |
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在庫確認 | AI自動在庫監視・カメラ:棚の在庫を24時間監視・売上データ:リアルタイムで消費量を分析・外部要因:天気・イベント・トレンドを考慮 |
発注点チェック | AI需要予測(複数要因を統合し、高精度に需要を予測) |
発注書作成 | 自動発注提案(最適な発注量・タイミングを算出) |
承認 | 承認フロー(重要度に応じて自動実行 or 担当者が確認) |
発注実行 | (上記承認後に自動発注) |
納期管理 | 納期・品質管理(AIが納期遅延や品質異常を早期検知) |
具体的な活用ケース:在庫監視の例
「この商品、そろそろ補充が必要かな?」「セールに向けてどれくらい仕入れておけばいいんだろう?」そんな悩みをAIが解決します。
店舗・倉庫の状況:AI統合分析
- 定点カメラ:商品棚の在庫レベルを画像認識で24時間監視
- POSデータ:レジを通った販売ペースをリアルタイムで取得し、現在の消費量を分析
- 天気予報データ:雨の日の傘やカップ麺の需要増加を予測
- 地域イベント情報:近隣で開催されるお祭りやコンサートによる商品の需要変動を予測(テキスト情報)
- SNSトレンド:特定の商品の流行具合や消費者の関心をリアルタイムで把握(テキスト情報)



「商品Aは明日の夕方に在庫切れ予測。すぐに発注が必要です。」
「商品Bは通常の1.5倍の発注が適切です。なぜなら、今週末に〇〇イベントがあるため、需要が急増する見込みです。」
「商品CはSNSで話題沸騰中。通常より大幅に増量して仕入れるべきです。」



AIの提案を確認して発注を実行。
AIが自動で最適な発注量とタイミングを算出してくれるので、発注業務が劇的に効率化されます。
具体的な活用ケース:サプライヤー管理
発注した商品が計画通りに届くかどうかの確認も、AIが強力にサポートします。
発注後の管理:AI監視
- 仕入先からの出荷通知(画像の送り状、テキストのメールなど)を自動で処理
- 配送会社のトラッキング情報をリアルタイムで監視し、遅延リスクを早期に検知
- サプライヤーのニュースやSNS情報(テキスト)から、生産遅延の可能性を分析



遅延発生時:「このサプライヤーからの納品は遅れる可能性があります。代替サプライヤーBに発注を検討してください。」と自動で提案
品質問題発生時:過去のデータから原因を分析し、再発防止策を提案
価格変動時:市場データと連携し、コストへの影響を自動で算出
効果
- 在庫回転率:30%向上。ムダのない効率的な在庫運用が可能になります。
- 欠品率:70%削減。販売機会の損失を最小限に抑え、顧客満足度を維持します。
- 発注業務時間:60%短縮。AIがルーティンワークを自動化し、担当者はより戦略的な業務に集中できます。
- 適正在庫維持:過剰在庫20%削減。保管コストや廃棄ロスを削減し、利益向上に貢献します。
人材採用・管理業務フロー:AIが採用・育成のパートナーに


「最適な人材を見つけたい」「新人を効率的に育成したい」人材に関するこれらの課題も、マルチモーダルAIが解決の糸口を提供します。採用から研修まで、AIが人事担当者の強力なパートナーとなります。
Before → After
従来の流れ | マルチモーダルAI導入後の流れ |
---|---|
求人掲載 | AI求人作成(過去の採用成功データから最適な求人文を自動生成) |
応募書類選考 | AI書類選考(履歴書・職務経歴書を画像+テキスト解析し評価) |
面接 | AI面接サポート(音声トーン・表情・回答内容をリアルタイム分析) |
評価・判定 | AI適性判定(複数データを統合し客観的にスコアリング) |
内定・入社 | (自動化対象外。判定結果をもとに人事判断) |
研修・教育 | AI研修プラン(個人の特性に合わせて研修内容を自動カスタマイズ) |
具体的な活用ケース:書類選考段階の例
大量の応募書類の中から、自社に合った人材を見つけ出すのは至難の業です。
応募書類の到着:AI処理
- 履歴書の写真から応募者の第一印象や表情の傾向を分析
- 手書き文字や履歴書のレイアウトから、応募者の丁寧さや几帳面さといった性格特性を推定(筆跡分析やデザイン分析)
- 職務経歴書の職歴パターンから、継続性や成長性を評価
- 志望動機の文章から、企業への本気度や論理的思考力を測定



AI評価
総合適性スコア:85点
強み:「コミュニケーション能力、継続性、問題解決能力」
懸念点:「特定の技術スキル不足の可能性」
面接で確認すべき点:「〇〇について具体例を交えて詳しく聞く」といった助言



AIの評価を参考に、書類選考の合否を判定。
AIが客観的な視点を提供することで、選考基準のブレを防ぎ、より公平な判断を支援します。
具体的な活用ケース:面接サポートの例
面接は、応募者の本質を見抜く重要な場です。AIが面接官の観察力を高め、より深い評価を可能にします。
面接実施中:AI分析(リアルタイム)
- 応募者の音声トーンや話す速度から、自信度や緊張度、情熱度を測定
- 表情分析(カメラ映像)により、回答時の誠実性、感情変化を評価
- 話し方(言語情報)の論理性、説得力を分析
- 質問への反応速度から、理解力や判断力を測定



「○○分野について、もう少し深く質問してください」
「ストレス耐性について、具体的な状況を想定して確認が必要です」
「チームワークにおける具体的な役割について、別の例を求めてください」
効果
- 選考時間:40%短縮。書類選考から面接まで、AIが効率化をサポートします。
- 採用ミスマッチ:50%削減。AIが多角的に分析することで、企業文化や職務内容に合った人材を見つけやすくなります。
- 新人の定着率:30%向上。入社後の研修プランもAIがパーソナライズすることで、新人の早期戦力化と定着につながります。
財務・経理業務フロー:正確性と効率性を極めるAI会計士
「経理業務は時間がかかってミスも許されない…」そんな悩みを抱える財務・経理部門も、マルチモーダルAIが強力なパートナーとなります。入力作業の自動化から異常検知、レポーティングまで、AIが正確性と効率性を極限まで高めます。
Before → After
従来の流れ | マルチモーダルAI導入後の流れ |
---|---|
伝票・領収書受付 | AI書類認識(紙・PDF・写真を自動でデータ化) |
データ入力 | (AIがOCR・構造解析で自動抽出) |
内容確認 | AI異常検知(金額・日付・取引先の妥当性をチェック) |
仕訳作成 | AI仕訳自動生成(内容に応じて勘定科目を自動判定) |
承認 | AI承認ルーティング(金額・内容に応じた最適承認者へ自動回送) |
帳簿記録 | AI分析レポート(財務状況を自動で可視化・グラフ化) |
具体的な活用ケース:経費精算処理の例
社員がスマホで撮ったレシートの写真を送るだけで、面倒な経費精算が完了します。
社員がレシート写真をスマホで送信:AI処理
- 画像からテキストを抽出(店名・日付・金額・品目などをOCRで読み取り)
- 抽出した取引内容から、会社の経費規程に基づき適切な勘定科目を自動判定
- 金額や取引先、日付が過去のパターンや会社の経費規程と照合し、妥当性をチェック
- 過去の承認パターンや金額の大きさから、人間による承認が必要か、自動承認で良いかを判断



「交通費:1,200円(適正、自動承認対象)」
「会議費:3,500円(適正、領収書あり)」
「接待費:8,000円(要確認:規程上限に近い、管理職承認へ回送)」



AIの判定結果を確認。
必要に応じて詳細を確認したり、自動承認された処理をモニタリングしたりするだけで済みます。
具体的な活用ケース:請求書処理の例
取引先から届く多種多様な請求書も、AIが正確かつ迅速に処理します。
取引先からの請求書(PDF/紙):AI処理
- 請求書の画像(PDFを含む)を読み込み、必要な情報を抽出(社名、日付、請求金額、品目、単価など)
- 抽出した情報と、自社の発注書データとの自動照合を行い、金額・数量・単価の整合性をチェック
- 支払条件や期日を確認し、支払スケジュールに反映
- 過去の取引履歴と比較し、金額や取引内容に異常がないかを分析



「通常通りの取引:自動承認可、支払い予定日に自動で処理を実行」
「金額に10%の増加:要確認。担当部署へ自動で問い合わせメールを送信」
「新規取引先:詳細審査必要。経理部長へ承認を回送」
効果
- データ入力時間:90%削減。手作業での入力が不要になり、入力ミスも激減します。
- 処理ミス:80%削減。AIが自動で照合・チェックを行うため、人為的なミスを大幅に削減できます。
- 月次決算期間:3日短縮。業務の効率化により、スピーディーな決算が可能になり、経営判断の迅速化につながります。
まとめ:マルチモーダルAIが拓く、次世代ビジネスの可能性
本記事でご紹介したように、マルチモーダルAIは、単に一部の業務を自動化するだけではありません。顧客対応、営業、製造、在庫管理、人材採用、そして財務・経理といった多岐にわたる業務フローにおいて、画像、音声、テキスト、数値データといった複数の異なる情報を統合的に理解し活用することで、以下のような大きなメリットをもたらします。
- 業務の劇的な効率化:これまで人間が行っていた煩雑な作業や時間のかかる情報収集をAIが代替し、従業員はより創造的で価値の高い業務に集中できるようになります。
- 品質と精度の向上:AIは膨大なデータを高速かつ客観的に分析するため、人間の目や経験では見落としがちな異常や、ばらつきが生じやすい判断を均一化し、全体の品質を高めます。
- 新たな価値創造と意思決定の迅速化:AIが提供する深い洞察や予測は、これまでになかったビジネスチャンスを発見したり、より迅速かつ的確な経営判断を下したりすることを可能にします。
マルチモーダルAIの導入は、決して一朝一夕で完了するものではありません。しかし、重要なのは、ご紹介したような一つの業務フローから段階的に導入し、その効果を確実に確認しながら、適用範囲を徐々に拡大していくことです。この新しい技術を賢く活用することで、貴社のビジネスは間違いなく次のステージへと進化するでしょう。
よくある疑問:FAQ


Q1. マルチモーダルAIと、現在使われているAI(例:チャットボット)は何が違うのですか?
A1. 現在普及している多くのAI(例:チャットボット)は、主にテキストデータのみを扱います。一方で、マルチモーダルAIは、テキストに加えて画像、音声、動画、数値データなど、複数の異なる種類の情報を同時に理解し、組み合わせて判断できる点が大きく異なります。これにより、より複雑で現実世界に近い状況に対応できるようになります。
Q2. マルチモーダルAIを導入するには、専門知識が必要ですか?
A2. AIの仕組みそのものに深い専門知識は必要ありませんが、導入する際には、自社の業務内容に詳しい担当者と、AIベンダーや開発パートナーとの連携が不可欠です。最近では、専門知識がなくても導入しやすいクラウドサービスや、既存システムと連携しやすいツールも増えてきています。
Q3. マルチモーダルAIは、どのような業種で特に効果を発揮しますか?
A3. 特に、顧客からの問い合わせが多いBtoC企業(小売、サービス業)、製品の品質管理や生産効率が重要な製造業、膨大なデータ分析が不可欠な研究開発機関、そして人手不足が課題の採用・人材育成部門などで大きな効果を発揮します。しかし、情報が多岐にわたるあらゆる業務においてその可能性を秘めています。
Q4. マルチモーダルAIを導入する際の注意点はありますか?
A4. 最も重要なのは、質の高い学習データを十分に用意することです。AIの性能は学習データの質に大きく左右されます。また、導入目的を明確にし、段階的にスモールスタートで始めること、そしてAIの判断を最終的に人間が確認する体制を整えることも大切です。
Q5. マルチモーダルAIの将来性について教えてください。
A5. マルチモーダルAIは、今後さらに進化し、より人間らしい柔軟な思考や判断ができるようになると予測されています。自動運転車の実現や、より高度なロボット開発、複雑な医療診断の支援など、社会の様々な分野で不可欠な技術となるでしょう。私たちの仕事や生活を劇的に変える可能性を秘めた、まさに「次世代のAI」と言えます。
専門用語解説
- モダリティ (Modality): 情報の種類や形式のこと。画像、音声、テキスト、動画、数値データなどがそれぞれ一つのモダリティです。マルチモーダルAIは、この「マルチ(複数)」のモダリティを扱います。
- OCR (Optical Character Recognition / 光学文字認識): 画像ファイル中の文字を識別し、テキストデータに変換する技術です。領収書や請求書をAIが自動で読み取る際に使われます。
- 予知保全: 機器の故障が発生する前に、その兆候をデータ(振動、温度、音など)から検知し、計画的にメンテナンスを行うこと。故障による突発的な停止を防ぎ、生産性を維持する目的があります。
- POSデータ (Point of Sale Data): 販売時点情報管理システムで収集されるデータのこと。どの商品が、いつ、どこで、いくらで売れたかといった情報が含まれており、在庫管理や需要予測に活用されます。