論理よりノリ!?『バイブコーディング』という感覚全振りプログラミングを解説

著者:GOZEN AI Lab管理人
生成AIエンジニア(オープンバッジ取得)生活や業務に潜む「面倒くさい」を手放すため、生成AIを活用した業務効率化施策、自動化ワークフローの構築・運用などを手がけ、実践と継続的な改善を通じて仕組みづくりを推進している。


結論:考えるな、感じろ。ノリとテンションがコードを制す。

「バイブコーディング」って、なんだか不思議な言葉ですよね。プログラミングに馴染みのない方はもちろん、プログラマーの方でも「ん?」と思うかもしれません。

従来は「直感」や「雰囲気」でコードを書く比喩的なスラングでしたが、近年AI技術の進化によって、まったく新しい開発スタイルとして再定義されつつあります

この記事では、プログラミング開発の現場で話題になっている「バイブコーディング」について、意味や背景、そして従来の開発手法やコツなどを、専門知識がない方にも分かりやすく解説します。

目次

イブコーディングとは? :AI時代のユニークな開発スタイル

「バイブコーディング」(Vibe Coding)と聞くと、「フィーリングでコードを書くの?」と思うかもしれません。実は、この言葉には伝統的な意味と、AI時代に生まれた新しい意味合いがあります。

かつてプログラマーの間で使われていた「バイブコーディング」は、経験に基づいた直感や勘に頼り、「なんかこんな感じで書けば動くだろう」と、仕様書よりも自身の感覚を優先して素早くコードを書く、比喩的なスラングでした。熟練したプログラマーの「ノリ」や「テンション」がコードを左右するという、ある種の職人技のようなニュアンスです。

しかし、AI技術が目覚ましい進化を遂げたことで、「バイブコーディング」はまったく新しい開発スタイルとして再定義されつつあります。

AI時代のバイブコーディングは、人間が自然言語(いつもの話し言葉や文章)や音声で「こうしたい」「こんな雰囲気で」といった指示を出し、その意図をAIが汲み取って主体的にコードを生成する開発スタイルを指します。厳密な仕様や設計書よりも、人間の直感や感覚的な「バイブ(vibe)」をAIに伝えることに重点が置かれます。

この新しい概念は、OpenAIの共同創設者でもあるAI研究者、アンドレイ・カルパシー氏が提唱したことで広く知られるようになりました。人間がコードそのものを意識することなく、AIにすべてを委ねて開発を進める体験を「Vibe Coding」と呼び、AI時代の開発文化を象徴する言葉として紹介しています。

ぜ「バイブ」なのか? :言葉に込められたニュアンス

なぜ、コードを書くことに「バイブ(vibe)」という言葉が使われるのでしょうか?

英語の「vibe」は、「雰囲気」「感覚」「直感」といった意味を持ちます。従来のバイブコーディングがプログラマー自身の内なる感覚やノリを指していたのに対し、AI時代のバイブコーディングでは、人間がAIに対して発する、感覚的で曖昧さを含んだ指示にこの言葉が使われています

つまり、「AIと人間が『ノリ』や『雰囲気』を共有しながら開発を進める」という、これまでにないインタラクションの様子を表現しているのです。

AIの高度な理解力によって、私たちは「何を作りたいか」という結果やイメージだけをAIに伝え、コードの書き方、使う技術、具体的な実装手順はAIが最適なものを判断してくれます。さらには完成までさせてしまう事も可能です

まさに、人間の「感じるままに」開発が進んでいく―これが現代のバイブコーディングが持つニュアンスです。

これは実際にRAGを作る際に使用していたものなのですが、このようなアプリを一瞬で作ってくれます。
私はコードは一切書いていません。

イブコーディングと従来のコーディング、何が違う?

バイブコーディングは、従来の、そして一般的な丁寧なコーディング手法とはいくつかの点で大きく異なります。

特徴AI時代のバイブコーディング従来の丁寧なコーディング
主体AI(人間は指示・評価・調整)人間(論理的・計画的に進める)
指示方法自然言語・音声・チャット(感覚的)設計書・仕様書・論理的な分解(詳細)
スピード非常に速い(AIが即時生成)設計や実装に時間を要する
可読性/保守性工夫次第でリスクあり(AI出力による)高くなるように考慮して作成される
適用シーンプロトタイプ、個人開発、アイデア検証重要システム、チーム開発、長期運用
リスク意図しないバグ、仕様のズレ、属人化開発コスト、仕様変更への対応負担

これらから見てわかるように、バイブコーディングはスピード感と手軽さが最大の特徴です。複雑な思考プロセスや、細部まで決まった仕様がなくても、AIに「こういうものが欲しいな」と語りかけるように指示するだけで、動くものがすぐに形になります。

一方、従来のコーディングは、しっかりと計画を立て、論理的に問題を分解し、可読性や保守性を意識してコードを記述します。大規模なシステム開発や、複数人で開発を進める際には、この丁寧なプロセスが不可欠です。

バイブコーディングは、この伝統的な手法に取って代わるものではなく、「もう一つの選択肢」として登場したと考えるのが自然でしょう。

んな時に「バイブコーディング」が有効?

では、「バイブコーディング」のような感覚的なアプローチは、具体的にどんな場面で力を発揮するのでしょうか?

  1. プロトタイプ開発やハッカソン: とにかくアイデアを素早く形にしたいとき。AIが瞬時にコードを生成してくれるので、試行錯誤のスピードが格段に上がります。
  2. 少人数・個人開発: 開発にかけられるリソースが限られている場合。AIがコードを書くので、一人でも高度な機能を実装しやすくなります。
  3. 新技術の試用やアイデア検証: 「こんなことできるかな?」と思いついた時に、すぐに動くものを作って試したいとき。
  4. 緊急のバグ修正: 原因ははっきりしないが、「多分ここをこう直せば?」といった直感的な修正を試みたいとき(ただし、後でしっかりとしたレビューは必要です)。

このように、スピードや手軽さを重視したい場面で、バイブコーディングは強力な武器となり得ます。ただし、チームでの共同開発や、長期にわたって運用される重要なシステムでは、しっかりとした設計やレビュープロセスを踏む従来の開発手法と組み合わせる、あるいは慎重に適用する必要があります

イブコーディングの注意点・落とし穴

一見手軽そうに思えるバイブコーディングにも、注意すべき点や落とし穴が存在します。

仕様のズレや意図しないバグ: AIは指示を解釈してコードを生成しますが、人間の微妙なニュアンスや、考慮すべき隠れた要件まで完璧に把握するわけではありません。「なんか違うな」「想定外の動きをする」といった、仕様とのズレやバグが生まれやすい可能性があります。

保守性・可読性の低下: AIが生成したコードは、必ずしも人間が読みやすく、後から修正しやすいように構造化されているとは限りません。属人的な「バイブ」の指示で生成されたコードは、指示した本人以外が理解するのに時間がかかったり、引き継ぎが難しくなったりする「属人化」のリスクも伴います。

AIへの過信: 「AIが全部やってくれるだろう」と丸投げしてしまうと、問題が発生した際に原因の特定や対処が難しくなります。AIの出力を適切に評価し、必要に応じて修正や調整を加える人間のスキルは、バイブコーディングの時代でも非常に重要です。

これらのリスクを理解し、プロジェクトの性質やチームの状況に応じて、バイブコーディングと従来の丁寧なコーディングを賢く使い分けるバランス感覚が、これからのプログラマーにはますます求められるでしょう。状況に応じて適切な開発手法やコーディング スタイルを選択することがプログラマーには求められます

イブコーディングを成功させるためのコツ

AI時代のバイブコーディングは非常に魅力的ですが、ただAIに丸投げすればうまくいくわけではありません。あなたの「バイブ」をAIに効果的に伝え、目的を達成するためには、いくつかのコツがあります。

  1. 「何をしたいか」を明確にする(手段はAIに任せる): バイブコーディングではコードの書き方を具体的に指示する必要はありませんが、「最終的に何を実現したいのか」「どんな機能が欲しいのか」といった目的やイメージは、できるだけ明確に持ちましょう。この「明確な目的」が、あなたの「バイブ」の核となります。AIはその核に基づいて最適なコードを生成してくれます。
  2. 最初はラフに、必要に応じて具体的に: まずは大まかな「こんな感じ」という指示から始めましょう。AIが生成したコードを見て、「ちょっと違うな」と思ったら、そのズレている部分について具体的な修正指示を与えます。感覚的な指示と論理的な指示を組み合わせることで、効率的に精度を高めていけます。
  3. AIとの「対話」を楽しむ: バイブコーディングは、AIとの共同作業です。一度の指示で完璧なコードが生まれるとは限りません。AIの応答に対して質問したり、別の方法を提案させたりと、まるで才能ある同僚と話すようにインタラクションを重ねることが重要です。この対話の中から、あなたのイメージがより洗練されていきます。
  4. 生成されたコードを「感じる」だけでなく「確認」する: AIが生成したコードは、一見正しそうに見えても、意図しないバグを含んでいたり、効率が悪かったりすることがあります。重要な部分や、期待通りに動かない場合は、生成されたコードをしっかりと確認し、テストを行いましょう。「なんとなく動いたからOK」ではなく、なぜ動くのか、他に問題はないかをチェックする意識が大切です。これは、AI時代のプログラマーに不可欠なスキルです。
  5. 「なぜこのバイブだったのか」を記録する: AIとの対話や、感覚的な指示の履歴は、後からコードを理解したり修正したりする上で非常に重要になることがあります。「なぜこのコードができたのか」の背景にあるあなたの「バイブ」や思考プロセスを、簡単なメモでも良いので残しておくと、属人化のリスクを減らし、チームでの共有も容易になります。
補足

実際にバイブコーディングを行っている中で「1は特に重要」です。経験上、仕様書段階からAIと一緒に作り、それを確認して進捗状況を常に人間・AIが把握しながら進めていく手法が効果的でした。
理由としてはAIは文脈保持に限界があるので、どこかのタイミングで必ず「忘れます」これが非常に厄介で、忘れられると当然、1からやり直しです。こうならない為に、「今どのフェーズで何をしているのか」を互いに把握できるルールを作り、それを基に作成していくと、スムーズに進行していくので、一度試してみてください。

バイブコーディングは、単に楽をするための手法ではなく、AIを強力なパートナーとして、より創造的かつスピーディに開発を進めるための新しいアプローチです。これらのコツを掴んで、AIとの新しい「バイブス」を活かした開発を楽しんでみてください。

化するバイブコーディングとAIツール

「バイブコーディング」が単なる比喩から現実的な開発スタイルへと進化できた背景には、AIコーディングツールの劇的な進化があります。

近年、GitHub Copilot Agent Mode、Cursor、Composer、Clineなど、自然言語での指示に対してコードを生成したり、開発ワークフロー全体を支援したりするAIツールが次々と登場しています。これらは、まさに人間の「こうしたい」というバイブをキャッチし、それをコードという形にするための強力なツールです。

著者

ちなみに、CursorはOPEN AIのo3やClaudの3.7Sonnetなどが使用できるという、破格の性能を持っています。

とめ:「バイブコーディング」は比喩から現実へ

「バイブコーディング」は、かつてはプログラマーの経験や直感による「ノリ」を指す比喩的な言葉でした。しかし、AI技術の進化により、今や「人間が感じたままの意図や雰囲気をAIに伝え、AIが主体となってコードを生成する」という、現実の開発手法として注目を集めています。

AI時代のバイブコーディングは、スピード感を持ってアイデアを形にするのに非常に有効なアプローチです。しかし、その特性を理解し、意図しないバグや保守性の低下といったリスクにも注意が必要です。

重要なのは、AIと人間の「バイブス」をうまく共鳴させ、お互いの強みを活かすこと。「AIに任せきり」ではなく、AIの提案を評価し、より良いものへと導く人間の役割は、これからも変わらず重要であり続けるでしょう。

くある質問:FAQ

Q1: バイブコーディングはプログラミング初心者でもできますか?
A1: AIツールを使うことで、コードの書き方を知らなくてもアイデアを形にしやすくなります。しかし、AIの生成したコードが正しいか、意図通りに動いているかなどを判断するためには、ある程度のプログラミングの基礎知識があると、より効果的に活用できるでしょう。まずは簡単なものから試してみるのがおすすめです。

Q2: バイブコーディングの時代が来たら、プログラマーの仕事はなくなりますか?
A2: プログラマーの仕事が完全になくなるというより、役割が変化すると考えられます。AIはコード生成を効率化しますが、プロジェクト全体の設計、要件定義、AIの生成したコードの品質評価、複雑な問題解決、創造的なアイデア出しなど、人間ならではの能力がより重要になります。AIを使いこなすスキルが求められるようになるでしょう。

Q3: どんなAIツールを使えばバイブコーディングを始められますか?
A3: 現在、GitHub Copilot Agent Mode、Cursor、Composer、Clineなど、様々なAIコーディングツールが登場しています。それぞれ特徴や得意な言語、機能が異なりますので、ご自身の開発したいものや環境に合わせて試してみるのが良いでしょう。まずはGitHub Copilotなど、比較的導入しやすいものから試してみるのも手です。

門用語解説

  • AI (人工知能 / Artificial Intelligence): 人間の知的な能力をコンピュータ上で実現しようとする技術や分野。バイブコーディングにおけるコード生成の主体。
  • 自然言語 (Natural Language): 私たちが普段使っている話し言葉や文章のこと。バイブコーディングでは、この自然言語でAIに指示を出します。
  • プロトタイピング (Prototyping): 製品やシステムの試作品を短期間で作ること。アイデアを素早く検証するために行われ、バイブコーディングが有効なシーンの一つです。
  • 保守性 (Maintainability): 作成したコードが、後から変更・修正・機能追加しやすいかどうかの度合い。バイブコーディングでは、意識しないと低下するリスクがあります。
  • 可読性 (Readability): 作成したコードが、人間にとってどれだけ読みやすく、理解しやすいかどうかの度合い。保守性と同様に重要な要素です。
  • 属人化: ある業務や成果物が、特定の担当者しか内容を理解しておらず、その人がいないと対応できなくなる状態。バイブコーディングでは、AIとのやり取り履歴などが共有されないと属人化しやすいリスクがあります。

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GOZEN AI Lab管理人、生成AIエンジニア(オープンバッジ取得)。生活や業務に潜む「面倒くさい」を手放す自動化システムの開発・検証・最適化に注力。これまでに、生成AIを活用した業務効率化施策や、n8n・Difyを用いた自動化ワークフローの構築・運用を手がけ、実践を通じて継続的な改善と最適化に取り組んでいる。

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