AIはどうやって考える?『AI推論』の仕組みを徹底解説!

著者:GOZEN AI Lab管理人
生成AIエンジニア(オープンバッジ取得)生活や業務に潜む「面倒くさい」を手放すため、生成AIを活用した業務効率化施策、自動化ワークフローの構築・運用などを手がけ、実践と継続的な改善を通じて仕組みづくりを推進している。


結論:AIは考える“ふり”をしているだけ。でも、その“ふり”が世界を変えている。

ChatGPTを触っていると「高度な推論を使用する」という文字を一度は見たことがあると思います。
AIは、まるで人間の脳のように考え、判断しているように見えますが、一体どうやって賢い「判断」を下しているのでしょうか?その秘密を握るのが、今回のテーマである「AI 推論」です。

この記事では、「AI 推論 とは?」という疑問に答えるべく、AI推論がどのようなものなのか、AI学習との違い、そして私たちの身の回りでどのように活用事例があるのかを、専門知識がない方にも分かりやすく解説します。

目次

AI推論とは「答えを出す」プロセス

早速ですが、AI 推論 とは、簡単に言うと「AIが、これまでに学習した知識やパターンを使って、新しい情報に対して答えを出したり、判断を下したりするプロセス」のことです。

想像してみてください。あなたがたくさんのリンゴとミカンを見て、それぞれの特徴(色、形、ヘタの形など)を覚えたとします。これが「AI学習」に当たります。

そして、目の前に新しい果物が出てきたとき、覚えている特徴と照らし合わせて「これはリンゴだ!」と判断しますよね。この「覚えた知識を使って、新しいものに対して判断を下す」行為が、まさにAI 推論なのです。

AIは、インターネット上の膨大な画像データから猫の画像をたくさん見て「これが猫の特徴だ」と学習します。次に、初めて見る動物の画像を見せられたとき、学習した猫の特徴と照らし合わせて「この画像は猫である可能性が高い」と判断します。

AI学習 と AI推論、どう違うの?

「AI 学習」と「AI 推論」は、AIを語る上でセットで出てくることが多い言葉ですが、役割が異なります。身近な例えで違いを見てみましょう。

  • AI学習(トレーニング):
    • 役割:データから知識やパターンを「学ぶ・覚える」こと。
    • 例え:たくさんのレシピ本を読んで、材料や作り方を覚えること。
    • 必要なもの:大量のデータ、計算能力(学習にはパワフルなコンピュータが必要なことが多い)。
  • AI 推論(インファレンス):
    • 役割:学習で得た知識を使って、新しい情報に対して「答えを出す・判断する」こと。
    • 例え:覚えたレシピを使って、実際に料理を作ること。
    • 必要なもの:学習済みの知識(レシピ本)、新しい材料(新しいデータ)、それを使って料理を作る場所(AIモデルを実行する環境)。

AI 学習は「賢くなるための準備」、AI 推論は「その賢さを実際に使う」段階と言えます。つまり、AIは学習によって知識の引き出しを増やし、推論によってその引き出しから最適なものを選び出して答えを出しているのです

AI推論の仕組み:学習済みのモデルを使って賢く判断

AI 推論の仕組みは、基本的には以下のステップで行われます。

  1. 学習済みモデルの準備: AI学習によって、特定のタスク(画像認識、音声認識、文章生成など)を実行できるよう訓練された「AIモデル」が用意されます。このモデルは、過去のデータから得られたパターンや規則が詰まった「賢さの塊」です。
  2. 新しいデータの入力: 判断したい対象となる新しいデータ(例えば、写っているものが何かを知りたい画像、話しかけられた音声など)がAIモデルに入力されます。
  3. モデルによる処理: AIモデルは、入力されたデータを、自分が学習したパターンや規則と照らし合わせます。ディープラーニング 推論など高度なモデルの場合、非常に複雑な計算と照合が一瞬で行われます。
  4. 推論結果の出力: 照合の結果に基づき、AIモデルは最も可能性の高い「答え」や「判断」を出力します。例えば、「この画像は猫です」「この音声は『今日の天気は?』です」「このメールは迷惑メールです」といった具合です。

この一連のプロセスが、AI推論の核となります。重要なのは、推論は「新しい、見たことのないデータ」に対して行われるという点です。

最近では、スマートフォンや車のコンピューターなど、比較的小さなデバイス上で推論を行うエッジAI 推論という技術も注目されています。これは、データをクラウドに送らずにその場で処理できるため、応答速度が速く、通信コストも抑えられるというメリットがあります。

AI推論の身近な活用事例

AI 推論 は、私たちの想像以上に多くの場面で活躍しています。いくつか具体的なAI 推論の事例を見てみましょう。

  • スマートフォンの顔認証/指紋認証: 登録された顔や指紋のパターンを学習し、入力された顔や指紋が本人かどうかを推論します。
  • ネットショッピングのおすすめ: 過去の購入履歴や閲覧履歴から、ユーザーが興味を持ちそうな商品を推論し、表示します。これも典型的なAI 活用事例です。
  • 迷惑メールフィルター: 受信したメールの文章や送信元などを分析し、過去の迷惑メールのパターンと照合して、迷惑メールかどうかを推論し、自動的に振り分けます。
  • 音声アシスタント(Siri, Alexaなど): 話しかけられた音声をテキストに変換(音声認識)、そのテキストの意味を理解し(自然言語処理)、適切な応答を推論します。
  • 自動運転: カメラやセンサーからの情報をリアルタイムで分析し、歩行者や他の車両、障害物などを認識・推論して、安全な走行経路や操作を判断します。
  • 医療診断支援: CTスキャンやMRIなどの医療画像を分析し、病気の可能性のある箇所やパターンを推論して医師の診断を支援します。
  • 工場での不良品検出: 製造ラインを流れる製品画像を分析し、学習済みの良品のパターンと比較して、不良品かどうかを推論します。

これらの事例からわかるように、AI 推論 は、私たちの生活を便利に、安全に、そして効率的にしてくれるために欠かせない技術となっています

AI推論 のメリット・できること

AI 推論 がもたらす主なメリットは以下の通りです。

  • 迅速な判断: 人間では時間がかかるような大量のデータ分析や複雑な判断を、一瞬で行うことができます。
  • 人間が見落とすパターンの発見: 学習データに含まれる微細なパターンや相関関係を発見し、人間が見逃してしまうような洞察を得ることがあります。
  • コスト削減・効率化: 自動化により、人手や時間を削減し、業務の効率を大幅に向上させることができます。
  • 新しいサービスの実現: これまで不可能だった、あるいは非常に困難だったサービスや機能(自動運転、高度な画像認識など)を実現します。

AI推論 の注意点・課題

メリットが多い一方で、AI 推論 にはまだいくつかの課題や注意点があります

誤った判断をする可能性: AIは学習データに基づいて推論するため、学習データに偏りがあったり、現実世界の想定外の状況に遭遇したりすると、誤った判断を下すことがあります。

判断根拠の不明確さ(ブラックボックス問題): 特にディープラーニングなど複雑なモデルの場合、なぜAIがそのように判断したのか、人間には理由が分かりにくいことがあります。

倫理的な問題・悪用の可能性: AIの判断が人間に影響を与える場合(採用判断、融資判断など)、公平性や透明性が問題になることがあります。また、悪意のある目的でAI推論が悪用される可能性もゼロではありません。

常に最新の学習が必要な場合も: 状況が変化する分野では、推論精度を維持するために、AIモデルを定期的に再学習させる必要があります。

これらを回避するためにファクトチェック(事実関係を調査・検証し、正しいかどうかを確認するプロセスのこと)を行ったり、回答事態に根拠を出力させ、目検チェックなどを行う事が重要です。

まとめ

この記事では、「AI推論とは?」という疑問から出発し、AIがどのように賢い判断を下しているのか、その仕組みやAI 学習と推論の違い、そして身近なAI 推論事例やAI 活用事例を見てきました。

AI推論は、AIが学習で得た知識を活用し、新しい情報に対して答えを導き出す、いわばAIの「判断力」です。私たちの日常生活から産業の現場まで、すでに様々な場所で活躍しており、その重要性は日に日に増しています。

もちろん、完璧な技術ではなく、課題も存在しますが、技術の進化とともにそれらも克服されていくことでしょう。AIを正しく理解し、知ることは、AIと共存する未来を生きる私たちにとって、ますます重要になっていきますので、この記事で記載した基本的な内容だけでもいいので、頭の片隅にでも置いておいてください

よくある質問:FAQ

Q1. AI学習とAI推論は、いつもセットで行われるものですか?
A1. いいえ、必ずしもセットではありません。一度AIモデルが学習を終えれば、その学習済みモデルを使って何度でも新しいデータに対して推論を行うことができます。学習は時間やコストがかかることが多いですが、推論は比較的短時間・低コストで行える場合が多いです。

Q2. 推論の精度はどのように決まるのですか?
A2. 主に、学習に使用したデータの質と量、そしてAIモデルの性能によって決まります。質の高いデータで十分に学習された高性能なモデルほど、より正確な推論を行う可能性が高まります。

Q3. スマートフォンでAIが動いているのも推論ですか?
A3. はい、多くの場合そうです。例えば、カメラで写したものが何かを認識したり、音声入力を処理したりといったタスクは、スマホ内のチップ上でエッジAI 推論として実行されていることが多いです。

Q4. AI推論は、人間が行う「考える」ことと同じですか?
A4. 全く同じではありませんが、似ている側面はあります。人間も過去の経験や知識に基づいて物事を判断しますが、AI推論は特定のタスクに特化しており、感情や直感といった要素は持ちません。

専門用語解説

  • AIモデル: AIが学習データからパターンや規則を学び取り、特定のタスク(画像認識や音声認識など)を実行できるように訓練されたプログラムやデータ構造のこと。学習済みの知識が詰まった「頭脳」のようなものです。
  • ディープラーニング: AI学習の手法の一つで、人間の神経回路を模した「ニューラルネットワーク」を多層に重ねた構造(ディープな層)を持つもの。複雑なデータから自動的に特徴を抽出し、高度な学習・推論を可能にします。
  • エッジAI: データをインターネットやクラウドに送ることなく、スマートフォンやIoTデバイス、工場内の機器といった「エッジ(末端)」の部分でAI推論処理を行う技術やシステムのこと。リアルタイム性が求められる場面や、通信環境が不安定な場所で有効です。
  • 自然言語処理: 人間が使う「言葉」(自然言語)をコンピューターが理解・分析・生成する技術のこと。音声アシスタントや翻訳アプリ、文章要約などに活用され、推論のプロセスで重要な役割を果たすことがあります。

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GOZEN AI Lab管理人、生成AIエンジニア(オープンバッジ取得)。生活や業務に潜む「面倒くさい」を手放す自動化システムの開発・検証・最適化に注力。これまでに、生成AIを活用した業務効率化施策や、n8n・Difyを用いた自動化ワークフローの構築・運用を手がけ、実践を通じて継続的な改善と最適化に取り組んでいる。

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